人間学を学ぶ雑誌「致知」2018年6月号特集テーマ「父と子」にて、意見判断のコーナーで取り上げられている介護離職についてご紹介します。
介護離職とは、親の介護等の事由によってそれまで続けていた仕事を辞めざる得ないことです。(主には時間や業務内容がそれまで通りにはいかないため)
今回の取材対象は、一般社団法人介護離職防止対策促進機構 代表理事 和気美枝氏。
ご本人も母親の介護により、それまで勤めていた会社を退職して転職せざるを得なかった経験から、介護者の先輩として情報を発信することを始めたそうです。
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実はこの介護離職は、アベノミクスの「新3本の矢」の政策の1つに入っているのですが、あまり認知されていないのではないでしょうか。私自身も恥ずかしながら本記事を読んで認識した次第です。
政策の1つに入っているので報道でアナウンスはされているんですよ、実は。
一般的に耳にする言葉としては、「1億総活躍社会」であったり、「女性や高齢者、障碍者の雇用促進」といったフレーズは耳にしたことがあると思います。
これらをひとまとめにして、「安心につながる社会保障」として政策に掲げられ2020年に向けて動いています。
このような状況の中、介護離職というキーワードがあまり表に出てこないのは、やはり当事者になった時でないと意識が向かないからではないでしょうか。
ご存知の通り、日本は少子高齢化が叫ばれて久しく、2025年問題なども言われる中で誰もが介護と向き合っていかないといけない状況ですので、いざそうなった時の前に予備知識を備えておくことと、職場の同僚がそうなった時に助け舟を出せる正しい理解を持ちたいと思います。
介護離職の現状
いま現在、働きながら介護をしている日本人は約240万人もいるそうです。この人数、人口比で2%程度になりますから仕事上の付き合いのある方で1人はいるんじゃないかと考えられますよね。そのうち1年間で約10万人が介護離職していると言われているそうです。
この介護離職をする人はどういう人かというと、介護が必要な世代の子供世代になるので40代〜60代が中心になって来るようです。単純にこの世代になると再就職は難しく、経済的に追い込まれかつ、肉体的、精神的にも追い込まれて行き、虐待や自殺、殺人といった不幸な出来事に連鎖して行くというケースがあるようです。
会社という組織で考えると、働き盛りの世代になるので突然離職されると組織の要を失って、組織としても痛手を被ることになること。また、この世代は年収も高いので国家の税収減にも繋がるということで、アベノミクス「新3本の矢」で取り上げられるほどの社会問題となって来ているのです。
介護離職その時どうする?
個人がやるべきこと
介護離職に至る兆候は以下の3つ
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初動で挫けること
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自分で抱え込んで挫けること
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誰にも言えなくて挫けること
突然やって来るその時は、パニックや憤りで選択肢が見えなくなり誰に相談することもなく会社を辞めるしかないという結論付けを勝手にしてしまうことが多いようです。
そうならないためにも以下の3つが重要と和気氏は言っています。
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会社の報告して今後の働き方を相談すること
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介護仲間を作って情報交換すること
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定期的にストレスを発散すること
この中で会社員にとっては、会社に報告というのがハードルが高いかもしれませんよね。
今までの日本社会の風潮では、「介護離職されても、代わりはいくらでもいる」「介護は家の問題だから、職場に持ち込むな」という感覚があるかもしれませんが、いまは時代が変わっています。
介護離職が政策に挙げられるぐらい、少子高齢化によって労働者人口の問題は深刻なんですね。若い人材も少なければ、育つまでどれだけ残るかもわからない。人手不足をマンパワーでカバーしようという風潮ももうなくなりつつあります。(程度がひどいと連鎖退職につながる恐れがありますよね)
そんなことも考えると、”その会社の仕事のやり方”をわかった人材がそうやすやすと退職して行くと非常に企業としても損害になるんです。
和気氏は、介護者は誰からも守ってもらえないので、介護をしていることを声に出して言うことが自分を守る第一歩と言っています。
今の時代ですから、どんな会社でも言うだけ言ってみると少しは良くなる可能性はあるんじゃないでしょうか。
会社がやるべきこと
会社側でやるべきこととしては社員から報告がきた際に、地域支援包括センターなどの相談窓口を情報提供するだけでも社員にとっては安心という会社が手を差し伸べてくれたと感じるからです。
上記で挙げた介護離職に至る兆候のうち2つが消えるわけですから、会社と社員相互に有益だということです。
介護者にとって本当に必要な情報を持っているのは介護経験者ですから、情報交換やアイデアがもらえるだけで雲泥の差ですよね。和気氏は見守りカメラというものを使うことで、埼玉の実家から東京都心まで働きに出ていても安心できると言っています。
その先に、介護者(社員)にとって本当な必要な情報を伝えてあげること。
地方の親の介護について相談を受けて、通算93日の介護休業を3回まで分割して取れることを伝えるだけでは、ただ法律を説明しているだけ。これでは、どのように休暇を活用して良いかわからずただ帰省して帰って来るのがオチだと和気氏は言います。
介護休業でやるべきは、介護体制を整えること。
医師との面談や介護認定の申請など何をやる必要があるのか明らかにして、それに付随する会社の支援態勢を提示すれば社員の物理的・精神的負担を大幅に軽減することができます。
また、社員によっては介護休業の存在すら知らない場合もありますから、定期的にアナウンスを行う必要もあります。本当に自分に関係ないと思うことは気にもならないのが人間ですから。
介護のために人生を諦めてはならない
和気氏自身、介護離職ではなく介護転職をした経験があり、その時一度生活をリセットしようと考えたそうですが、結局はなんの解決にもならず収入が7割以上も減ったそうです。その時、気づいたのは会社を辞めても介護は終わらないこと。
その時に、「他の人はどうしているんだろう」と思った時に読んだ介護の本の著者の介護者支援団体に支えられた経験から、自らもっと情報発信して行くことが必要だと考えて現在の活動に繋がっているという。
和気氏の経験からくる考え方で、「介護は生活そのものであり、介護をしながら働くことは決して特別なものではない」というものがあります。この前提、私もすごく大切だと思います。
その中で、介護者となったあなたは「自分はどうしたいのか明らかにすること」が重要だと和気氏は言います。働きたいのか、親のそばにいたいのか等々。
自分を主人公にした軸を持って行動し、1日24時間という限られた枠の中でどのように折り合いをつけるかを真剣に考える必要があると言います。
自分自身の軸が決まれば、活用できる社会的リソースはあるので専門スタッフが動くことができる!一人で全部抱え込んでいては、専門スタッフも動けないうことを理解する必要があると語っています。
まとめ
いかがでしたか?
介護の問題は、すぐそこにやってきていると思います。少子高齢化の中で誰もが直面する言ってもいい課題でしょう。
その中でこのように介護経験者または介護中の方のアドバイスをいただけるのは心強い限りですね。この記事を読まれた方は、いつかくるかもしれないその日に、「そういえば相談できる組織があったな」と思い出してもらうだけでググることができるのでお役に立てばと思います。
しかしながら、「自分自身の軸を持つ」というのは日本人にとって非常に苦手なことなので、少しでも心に引っかかった人は一度考えてみても良いかもしれないですね。介護に限らず。