人間学を学ぶ月刊誌「致知」2018年2月号特集テーマ「活気応変」において、ジャパネットたかた創業者の高田明氏と以前にも本ブログで記事をご紹介したトップマーケター神田昌典氏の対談記事が掲載されています。
高田明氏は、ジャパネットたかたの経営は後進に任せ、サッカークラブ「V.ファーレン長崎」の社長を勤めて来期J1リーグへの昇格が決定している。
不易流行の「いまを生きる」
ジャパネットたかたを発展成長させてきた高田社長は、売上や利益の経営目標を持たないという。
また、スポーツの分野において着手するときにも勝った負けただけではなく、その先に何をもたらすのかというブレない志を”ミッション”と呼んでいる。
V・ファーレン長崎においても、就任半年にてJ1昇格が取り沙汰されるが、J1昇格が目標であったかというそうではないと語っている。
目標はサッカーというスポーツを通じて、世の中の人たちに元気や生きがい・夢・感動を伝えていく。さらに長崎は広島とともに被爆した県であるので《平和を発信するクラブである》
あくまでJ1昇格や勝つことは目標ではなくプロセスであり、サッカークラブという一つの企業を再生させると一つ一つの課題を潰していった結果である。
高田社長の考えをまとめると、松尾芭蕉の「不易流行」という言葉を使って説明されている。
目標の部分は時代の流れの中で変化していって当たり前で、「不易」の部分は先ほどの”ミッション”にあたり、「流行」の部分は”目標や手段”であると。
いま目の前にある一つ一つのプロアセスに集中することを積み上げて行くことで、最終的な人生の目標に辿り着ける。ジャパネットたかたにしても最初からメディアミックス型の通販事業を手がけるとは考えていなかったが、時代の流れに応じてその瞬間を一所懸命に生き続けた結果、今日を迎えている。
「不易流行」とは
松尾芭蕉一門の俳諧の一つで、絶対に変わることがない部分を忘れずに、新しく変化を続けているものを取り入れていくこと。
または、新しいものを取り入れていくことそのものが、永遠に変わらないことであるということ。
「不易」はいつまでも変わらないこと。
「流行」はその時々に合わせて変化すること。 (四字熟語オンラインより)
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生き残る企業は変化を作り出す
高田社長の通販業界30年の肌感覚で感じるのは、IT化によってもたらされたのはグローバル化により情報が溢れお客様の選択肢が増えているので、伝える側も世の中のトレンドを把握しておかないと経営できない時代になったということ。かつては、狭い範囲の経済圏でヒット商品というと3年5年と売れ続けていたので「変化に対応しましょう」と言っていたが、最近では「変化を変化をつくり出さないと企業は残らない」と言っている。
そんな高田社長の好きな言葉は、世阿弥の「初心忘るべからず」
初心というと一般的に若い時の気持ちとなるが、今の時代の流れを考えると50歳の初心、60、70、80、90、100歳の初心と生きていれば初心はずっと変化しながら積み上がって行く。その中で最期を迎える時が自分の集大成だと考えると、何事も年齢は関係ないと語り、今年70歳にしてますますパワーにみなぎっている。
売るためのヒント
経営コンサルタントとして1年間に500社以上のキャッチコピーを考案したこともあるという神田氏は、キャッチコピーで売上が上がると言う。
「多くの会社が商品をわかりやすく説明できていないので、お客さんのどう言った悩みを解消できてどのようなベネフィットを得られるかを、顧客視点でわかりやすく説明すること」
理屈ではわかるけどなかなか難しいですよね。しかし、この視点が非常に重要で、神田氏は”フューチャーマッピング”と言う手法を著書で紹介している。
ストーリー思考—「フューチャーマッピング」で隠れた才能が目覚める
フューチャーマッピングのポイントだけご紹介すると、120%幸せで満たされたユーザーの顔を想像して、詳細に思い浮かべて、そこから逆算してどのような行動をして行くかと言う思考プロセスである。
神田氏のコンサルタント経験でうまくいったプロジェクトうまくいかなかったプロジェクトを振り返ると、この”フューチャーマッピング”という手法は必ずうまく行くそうだ。
この考え方は、高田社長も同じような考え方をして商品紹介を行ってきたと言うことで同意されている。いかに具体的なユーザーをイメージして得られるメリットを伝えるか。
高田社長の通販は、あなたにとっても記憶に新しいですよね。
90秒にかけた男 (日経プレミアシリーズ) [ 高田 明 ]
これからの時代に必要なこと
神田氏がコンサルタントとしてよく受ける質問をあげている。企業規模により異なるが、地方の中小企業はやはり売上や目の前の市場でどのように顧客を獲得して行くかということ。それを乗り越えた企業は、組織のマネジメントに悩みが移る。その先に行くと「運とは何か」「人間とは何か」という段階に入って行くという。
神田氏の経験上では、「より良い人間としての生き方は何か」という問いかけを続けている企業は繁栄するという。
高田氏は、「人を感じる心」を持たないといけない。それは自社のコールセンターの例を引き合いに出して、マニュアルに書いてあることではなく「相手が何を求めているか」を感じる心。
AIやSNSの発達に伴う企業活動や人間自体の生活環境も多くな変革期に来ている。
テーマが「伝える」ということになると高田社長は、情熱・パッションを大事にしている。これは伝わって来ますよね。それがないと、非言語の表情・指・目・全身その全てで喋理、情熱を語り続ける。
技術革新が進む中、高田社長が危惧する点として”人間は喜怒哀楽を言葉で表現することが人間の素晴らしさ”でその部分が弱くなってしまうようであれば、コミュニケーション教育や情熱教育が必要になってくると感じている。
神田氏はこの時代環境というものは変わるものだが、失ってはいけないものがあるという。それは、”人の痛みを感じる心”。
現代の我々は飢えることのない戦争のない生活をしているが、情報革命によって非常に洗脳されやすい世の中に生きている。だからこそ情報に対するリテラシーを磨かなくてはいけないし人の痛みに対する理解、思いやりを培っていく教育が必要だと提唱する。
まとめ
今回は「伝える」というスキルの突出した二人の対談で、昨今のAI技術の発達で耳にすることが多くなった”シンギュラリティ”にも関連してくる内容となっている。
技術的特異点(ぎじゅつてきとくいてん、英語:Technological Singularity)、またはシンギュラリティ(Singularity)とは、人工知能(人工超知能、汎用人工知能、AGI)の発明が急激な技術の成長を引き起こし、人間文明に計り知れない変化をもたらすという仮説である[1]。人類が人工知能と融合し、生物学的な思考速度の限界を超越することで、現在の人類からして、人類の進化速度が無限大に到達したように見える瞬間に到達すること[2][3]。実際に人類の進化速度が無限大になることはないが、進化速度が極めて速く、数学的な特異点と同様に見えるため、このように名付けられた。2010年代以降、一躍有名になったレイ・カーツワイルの予言の影響により、一般層を中心に2045年問題とも呼ばれている。 (wikipediaより)
内容はさることながら、特筆すべきはV.ファーレン長崎のことだ。
チーム自体は2013年にJ2に参戦していたが、今シーズン開幕直後には累積赤字が3億円を超え選手に給料を払えない自体に陥っていた。その時に白羽の矢がたったのが高田社長だ。
2017年4月に急遽社長に就任するやいなや、これまでスポンサーを務めていたジャパネットホールディングスの100%子会社として受け入れ職場環境の改善に重きを置いた改革を行なったという。
例えば、選手のモチベーションを上げるために試合前に家電のチャリティーオークションを行うことで観客を増やしたり、自宅に選手を招待してカラオケやバーベミューを行ったり。事務方の業務改革もテレビを特集されるなどしている。
ここで重要なポイントは、サッカー界のおいては強ければ観客が入り、チームが弱いのは現場のせいになって監督やコーチの更迭が行われる。これは世界的な慣例であるが高田社長は全く逆の取り組みで1年を待たず結果につなげている。
もちろんJ1昇格後の残留争いや上位の成績を残すという課題はこれから出てくるだろうが、高田社長の”ミッション”を思い出して欲しい。もちろん選手層の問題はあるが、これから楽しみではないだろうか。
ちなみにこの”ミッション”だが、言葉は違うが以前ご紹介している”アファメーション”と同じだ。
やはり大きく抽象的なゴールを設定することがステージを駆け上がっていくのに重要なポイントである。